カオス 2017 8 20
書名 決裂する世界で始まる金融制裁戦争
著者 渡邉 哲也 徳間書店
カオスとは、インターネットで検索してみると、
天地創造以前の世界で、混沌とした世界を意味するという。
さて、書評に入ります。
マスコミでは、無批判にグローバリズムが称賛されますが、
「グローバリズムには、光と影がある」と著者は指摘します。
よく言われるのは、
物とマネーの出入りが自由となり、
経済が発展するという論法です。
しかし、肝心なことを忘れています。
グローバリズムには、物とマネーだけでなく、
人の出入りも自由になることです。
たとえば、欧州文明の根底には、キリスト教があります。
これが欧州の基本です。
しかし、イスラム圏から大量の難民が押し寄せて、
あるいは、移民が大量に押し寄せたら、どうなるか。
メリットとしては、安価な労働力を確保することができるでしょう。
一方で、危惧されるのは、イスラム圏からの移住者たちは、
欧州各地に「イスラム社会」を築くことになるでしょう。
今は、こうした「イスラム社会」は、「点と線」の状態ですが、
やがて、欧州のイスラム化は避けられないでしょう。
宗教的な結束力では、キリスト教よりも、
イスラム教の方が圧倒的に強いでしょう。
だから、共存はないのです。
欧州で起こっている文明の衝突、
いや、宗教が文明や文化の基礎となっていますので、
この衝突は、宗教の衝突と言ってよいでしょう。
結局、宗教の衝突は、イスラム教の勝利で終わるでしょう。
これをキリスト教徒が受け入れるならば、
確かに、宗教の共存は可能でしょう。
しかしながら、人類の歴史を見れば、
一方の宗教が他方の宗教を滅ぼして拡大したのも事実です。
さて、この本から引用しましょう。
台湾の台北では、インドネシアなどから、
約10万人のイスラム教徒が労働者として流入しているが、
彼らは、イスラム教の生活スタイルを持ち込んで、
台北の街を歩いている。
日曜日やラマダンの時期になると、
台北市内の駅のコンコースには、
大勢のイスラム教徒が集まってくる。
彼らは、出稼ぎ労働者で、お金がないため、
エアコンの効いた涼しい駅構内で過ごすのだ。
多いときには、数千人以上も集まり、
民族衣装を着た人たちが集会をしたり、
歌を歌ったりする光景がある。
(引用、以上)
台湾に渡ったイスラム教徒が、
台湾の生活習慣を習得して、
台湾の文化に同化して、
台湾人らしくなれば、全く問題ありませんが、
イスラム教では、それは、あり得ないでしょう。
イスラム教は、生活様式や行動様式まで規定する宗教だからです。
結果的に、台湾において、
イスラム文化の拡大と台湾文化の縮小ということになるでしょう。
これを台湾人が受け入れるならば、共存となりますが、
受け入れないならば、やがて文明の衝突が起こるでしょう。
さて、日本は、希望の光となるかもしれません。
日本では、1月1日の正月には、神道の儀式を行い、
8月中旬の「お盆」には、仏教の儀式を行い、
年末には、クリスマスで盛り上がる。
これは、宗教の重層信仰と言えるかもしれません。
こうした宗教的な寛容が、世界宗教の解決につながるかはわかりませんが、
ひとつの解決策になることは間違いないでしょう。
もうひとつの解決策で、根本的な解決は、
21世紀において、世界宗教の出現があれば、
つまり、キリスト教とイスラム教を超える世界宗教が出現すれば、
文明の衝突や宗教の衝突、いやカオスは終わるでしょう。